2011年2月20日日曜日

“Z”の品格――LED REGZA「Z1シリーズ」(前編?

 「レグザ第二章始まる。」をキャッチフレーズに、デザインから映像エンジンまで一新した東芝の“LED REGZA”。型番も「Z1」「RE1」「HE1」というように思い切りよく1番として新展開を印象づけ、どのシリーズも新デザイン、新エンジンを搭載するなどスペックの底上げを図っている。

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 しかし、映像ファンを中心に高い支持を得ている“Z”は、ほかのシリーズと何が違うのだろうか。Z1シリーズだけが持つこだわりの機能とは? 開発担当者に詳しく話を聞いた。【 聞き手:芹澤隆徳,ITmedia】

――Z1シリーズは、Zとしては初のLEDバックライト搭載モデルとなりますが、前モデルのZ9000のCCFLバックライトとの違い、メリットを改めて教えてください

本村氏: 液晶テレビの進化を語る上では、バックライトの進化も外せません。蛍光管の間はずっと明るさが変わらなかったのですが、ある時点から輝度をコントロールできるようになり、これでかなり画質が向上しました。その後、バックライトのスキャニングが可能になり、さらに映像全体の平均輝度に合わせて、CCFLの明るさをリアルタイムに動かせるようになった。それまでプラズマに対して不利といわれてきた“黒の締まり”といった問題
は解消できたと考えています。

 一方、バックライトとしてのLEDでは、当初はRGB(レッド、グリーン、ブルー)のLEDを使用する製品もありましたが、ご存じの通り、現在では白色LEDが主流になっていると思います。当初は画質中心でLEDを使おうとしたため直下型が中心でしたが、最近はエッジタイプが主流になり、薄さと省電力にも大きく寄与しています。

 われわれは当初からホワイトLEDが中心になると考え、「ZX8000」シリーズや「CELL REGZA」など早くから対応してきました。その考え方は正しかったと考えていますし、技術的なノウハウも蓄積できました。

 よく間違えられるのですが、白色は白色でも、バックライトに使っているホワイトLEDと、照明用のLED電球では蛍光体の特性が異なります。この図を見れば一目瞭然(りょうぜん)。しっかりITU-R BT.709(HDTV向けの色空間標準規格)をカバーできています。

住吉氏: この図は、「42Z9000」相当のCCFLバックライトと「42Z1」のLEDバックライトの色再現範囲を重ねたものです。ほとんど変わりませんが、微妙にLEDのほうが赤の再現範囲が広いこと Maple story rmt
が分かると思います。BT.709比では、Z9000が98%に対して、Z1は101%。実際に映像を比較しても、真紅は42Z1のほうが出ます。そして重要なのは、色再現範囲のうち赤近辺は人間の視感度が非常に高いということ。肌色から赤にかけて、違いがよく分かります。つまり、赤の色再現範囲がわずかでも拡大しているということは、映像の印象やインパクトとして、かなり違ってくるのです。

本村氏: もう1つ重要なことは、LEDのほうは電源投入直後から本来の明るさになることです。CCFLでは、最高輝度に至るまで15分から30分もかかります。また、温度によってホワイトバランスは多少異なってきますので、電源投入直後から長く使用していると、ホワイトバランスがシフトしていきます。CCFLとLEDではシフトの仕方が少し違うため、映像の印象が異なることはあります。ただ、そこを含めてチューニングをすれば、どちらであっても狙った色温度や色再現範囲は出せるはずです。

住吉氏: ときどき「LEDモデルは青白い」という声を聞きますが、基本的にそういったクセはありません。ただ、先ほど本村がお話したホワイトバランスに注意していない製品では、電源投入直後としばらく使用した後(温度上昇後)では映像の印象が異なるかもしれません。また、LEDモデルを出すとき、「変わった」というイメージ、あ
るいは画面が「明るい」といったイメージを出そうと必要以上に意識してしまった可能性もあります。例えば、同じ明るさでもブルーが強いと輝いて見えます。LEDバックライトのテレビが「青白い」と言われる背景には、そうした理由があるのかもしれません。

本村氏: われわれは、ホワイトバランスのシフトにも十分配慮していますし、変わった感を出したいといった意識もありません。LEDもCCFLの高画質化の延長線上にあるものです。

 2010年夏モデルのREGZAでは、エリアコントロールが可能なエッジタイプを採用していますが、これは直下型とエッジ型の“いいところ取り”。しかも、それが一般的な価格レンジにまで落ちてきたという状況です。東芝はLEDへの対応が早かったこともあり、ノウハウを蓄積できました。2012年にはCCFLモデルの国内販売をやめ、LEDへ全面的に移行したいと考えています。

――Z1シリーズとRE1シリーズの37V型以上には、同じIPSパネルとバックライトが使われています。両者の違いはなんでしょう?

本村氏: RE1とZ1の絵作りに関しては、若干修正をかけています。RE1はどちらかというと「明るいリビングで視聴するお客様」を想定しているので少し明るめにチュー
ニングしています。対してZ1は、「映像にこだわりをもった方」に向けた、より細かいチューニングを施しています。

 例えば、中間輝度より上(明るい映像信号)がきたとき、それを抑え気味にしてでも階調性を重視したセッティングです。結果として、色も若干リッチに見えるはずです。パッと見のキャチーさよりも、じっくりと見ると違いが分かるのが、Z1の絵作り。つまりZ1のほうが階調性や精細感、色再現を“よりHi-Fi”(忠実に)にする方向性です。

住吉氏: 確かに、37V型以上では同じパネル使っているので、基本的には微妙なチューニングの部分が異なります。よりこだわって作っているのがZ1といって良いでしょう。

●Z1シリーズとRE1シリーズ、映像エンジンの違い

――Z1シリーズもRE1シリーズも映像エンジンとして「次世代レグザエンジン」を搭載していますが、どのような違いがありますか?

住吉氏: Z1シリーズの映像エンジンは「次世代レグザエンジンDuo」と呼んでいまして、チップがRE1シリーズよりも1つ多いダブルチップの構成になっています。

 それと、ここを見てください。もう1つチップがあります。これは「Z9000」シリーズなどで超解像
処理に使っていたLSIです。メインLSIにも超解像処理回路が入っているのですが、Z1にはあえてこのチップも搭載しました。

――なぜですか?

住吉氏: 追加したチップのほうには、高精度な「画像パターン検出型の3次元ノイズリダクション」が入っているからです。例えば、放送の暗いシーンでパッパッとインパルスノイズが出ることがあります。それに対して高域成分を元波形のまま抽出して、それをちゃんとキャンセルしてあげる。これが実はS/Nの改善に大きく効いています。

 ただし、3次元ノイズリダクションを強くするだけでは弊害もあります。3次元NRは、フレーム間で差異を検出して必要な部分にNRをかけるのですが、映像が動いているときには“ずれた映像”と比較してかけてしまうため、高域成分の細かいディテールが消えてしまう。画質的にはあまりよくありません。

 MPEG独特のノイズが多い番組を見たときなどは、暗い映像でノイズがフラッシング状に出てくることがあります。MPEG特有の0.5秒おき(Iピクチャー)に出てくるノイズを取り除くには効果的です。さらに、ノイズを低減できているがために、微小領域まで超解像をきっちりとかけられるメリットもあります。対して、ほかのモデルでは本当の微小領域では超解像の効果を弱めています。Z1シリーズで
はきっちり表示できていた顔のしわや服の質感といった細かい部分が、RE1ではでないこともあります。Z1を見ると、パッと見で視力が上がったように感じると思います(後編で詳細)。

 トータルのS/Nがいいのに精細感も高い。これがZ1の特長です。Z1は映像にこだわりのある方々を購買層と想定しているので、その人たちが満足できるように、白ピークから最暗部まで階調性が連続的に保たれるようにしています。すると、細かい質感が出てくるようになり、それによって立体感や奥行き感も増す。

 例えば、ガンマで明るい方を寝かしたりすると、“明るさ感”は出るのですが、そうすると白いシャツのしわが出にくいとか、ライトが当たっている女性アナウンサーの肌がべたっとして立体感が出ないといった現象が起きやすいのですが、Z1ではそういうことがありません。正しい階調性により、正しい質感を出せる。基本的にREGZAはすべてHi-Fi志向ですが、Zシリーズは“よりHi-Fi志向”。「よりREGZAらしいREGZA」といえます。

 同じことは色関係にもいえます。例えば、原色系を強調して“パッと見”の印象を良くするといったチューニングを行うメーカーもありますが、REGZAではやりません。より本物に近い色再現になるよう、3次元カラーマネジメントやホワイトバラン
スを調整するためのRGBガンマテーブルをベストチューニングしています。

 ガンマの部分で、違いが一番分かるのは“白トビ”の部分でしょう。Z1で見ていると、最明部でも階調性が十分に出るように自動的にチューニングされます。そういった部分を、よりしっかり作り込んだのがZ1なのです。

――Z1シリーズのほうが発売時期が遅いのは、そうした調整を行っているからですか?

住吉氏: それは単にスケジュール上の都合ですが、結果として今回はZ1のほうが少し遅れて発売されるので、細かいチューニングをかけることができます。数週間、半月くらいの間でも、絵作りのノウハウはどんどんたまっていくものです。時間をかければかけるほど良いものができますから、現場からいうと半月の違いは大きいですね。

 また、実際に量産を始めたとき、液晶パネルなどはモノによってバラツキが出てきます。いくら全数チェックを行っているといっても、最初のうちは、ほんの数枚しか入ってきません。しばらくして数がそろったところで、パネルのセンター(平均値)がパネルメーカーの示した通りなのかを見極める必要があります。とても地味な作業ですが、実は量産中でもほんの少しずつ調整を加えていきます。その点、今回のZ1シリーズは、(ほかのモデルの)量産を開始して、しばらくしてから仕込めるので有利ですね。


 後編では、Z1シリーズだけに搭載されている画質向上機能について、1つずつ詳しく聞いていこう。


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引用元:RMT(リアルマネートレード)専門サイト『RMTワンファースト』

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